古林形成外科-横浜院

医療コラム

陥入爪と巻き爪の違いは?見分け方・原因・痛み・治療方法の違いを形成外科医が解説

「陥入爪と巻き爪は何が違うの?」
「爪の横が痛いけれど、これは巻き爪?それとも陥入爪?」
「巻き爪が悪化すると陥入爪になる?」

このような疑問を持つ方は少なくありません。

巻き爪は、爪甲が横方向に強く湾曲した「爪の形状」を表す言葉で、一方、陥入爪は、爪の端が周囲の皮膚に食い込み、痛みや炎症を起こしている「病的な状態」を指します。

そのため、爪がそれほど巻いていなくても陥入爪になることがあります。反対に、爪が強く巻いていても、周囲の皮膚を刺激していなければ痛みや炎症がほとんどないケースもあります。また、巻き爪と陥入爪が同時に起こることもあります。

この記事では、陥入爪と巻き爪の違いや見分け方、それぞれが起こる原因、痛みや治療方法の違いについて形成外科専門医の視点から詳しく解説します。

陥入爪と巻き爪の違いと見分け方

陥入爪と巻き爪を見分ける際には、単純に「爪が曲がっているか」だけを見るのではなく、

  • 爪そのものの形
  • 爪の横に痛みがあるか
  • 赤みや腫れがあるか
  • 膿や肉芽ができていないか

などを総合的に確認することが重要です。

爪の形との違い

巻き爪では、爪の左右が内側へ強く湾曲し、爪が筒状に巻いているような形になります。

医学的にはpincer nail deformity(鉗子状爪)などと呼ばれ、爪甲の横方向への過剰な湾曲を特徴とする爪の変形を指します。

一方、陥入爪では必ずしも爪そのものが大きく変形しているわけではありません。

一見すると比較的平らな爪であっても、深爪などによってできた鋭い爪の角が周囲の皮膚へ刺されば、陥入爪になることがあります。

つまり、

「爪が巻いている=巻き爪」
「爪の端が皮膚へ食い込み、炎症を起こしている=陥入爪」

という違いがあります。

爪の横の痛みの違い

陥入爪では、爪の端が皮膚を直接刺激するため、爪の横に痛みが生じやすいのが特徴です。

初期には、

「靴を履いた時だけ痛い」
「爪の横を押すと痛い」

程度の場合もあります。

悪化すると、何もしていなくてもズキズキ痛んだり、歩くだけで強い痛みが生じたりすることがあります。陥入爪では鋭い爪甲側縁が周囲組織へ入り込み、炎症性刺激を生じます。

巻き爪でも湾曲した爪が皮膚を圧迫すると痛みが出ることがありますが、形が大きく巻いていても痛みをほとんど感じない方もいます。

したがって、「見た目が巻いているから痛い」「巻いていないから陥入爪ではない」とは限りません。

膿や肉芽の形成の違い

陥入爪が悪化すると、爪が皮膚を繰り返し刺激することで炎症が強くなり、赤み、腫れ、浸出液、膿などが生じることがあります。

さらに炎症が長引くと、爪の横に赤く盛り上がった「肉芽」が形成されることもあります。進行した陥入爪では排液や爪郭の肥厚などを伴うことがあります。

一方、巻き爪は「爪の形状」を示すため、巻いているだけで必ず膿や肉芽ができるわけではありません。

ただし、巻いた爪が周囲の皮膚へ食い込み、陥入爪を併発すれば、炎症や肉芽が生じることがあります。

陥入爪と巻き爪が起こる原因

陥入爪と巻き爪には共通する要因もありますが、その発生メカニズムは同じではありません。

陥入爪の原因

陥入爪は、爪の端と周囲の皮膚との位置関係が崩れ、爪甲側縁が皮膚へ食い込むことで生じます。

原因は一つではなく、爪の切り方、靴による圧迫、外傷、爪の形状など以下に示す複数の要因が関係します。

深爪

陥入爪の原因として特に注意したいのが深爪です。

爪の角を皮膚よりも深い位置まで切ってしまうと、その時点では痛みが軽くなっても、爪が伸びる過程で残った角が皮膚へ刺さることがあります。

痛みが出るたびに爪の端をさらに深く切ると、

「切る→一時的に楽になる→爪が伸びて再び刺さる→また深く切る」

という悪循環になることがあります。

間違った爪切り

爪の左右を深く丸く切る「バイアスカット」も、陥入爪を引き起こす要因になります。

爪の角を極端に落とさず、爪先を比較的まっすぐ残す「スクエアオフ」に近い形を意識することが重要です。

すでに皮膚の奥へ爪が入り込んでいる場合には、自分で爪を掘り出そうとしないでください。

靴による圧迫

先端の狭い靴やサイズの合わない靴では、足の指が横方向から圧迫されます。

その状態で歩行を繰り返すと、爪と皮膚が強く押し付けられ、陥入爪の発症や悪化につながることがあります。

不適切な靴による局所的な圧迫は、陥入爪に関連する要因の一つです。

爪の端が皮膚を刺激する

深爪だけでなく、爪の角が鋭くなっている、爪が厚い、巻き爪を併発しているなどの理由によって、爪の端が皮膚を刺激することがあります。

この刺激が繰り返されると炎症が起こり、痛みや腫れ、肉芽形成へ進行する場合があります。

巻き爪の原因

巻き爪は、爪甲が横方向へ過剰に湾曲した状態です。

その原因は一つではなく、遺伝的・解剖学的な要因や、外部から加わる力など複数の要因が関与すると考えられています。

靴などによる圧迫

足先が強く圧迫される靴を長期間使用すると、爪やその周囲へ持続的な力が加わります。

こうした慢性的な外力が爪の変形に関係する場合があります。

爪への力のかかり方

足の爪は、単純に生えているだけではなく、歩行時に足趾へ加わる力などさまざまな物理的影響を受けています。

爪に加わる力のバランスが変化することで、爪の湾曲に影響する可能性が指摘されています。

爪の形状など

もともとの爪の形、爪床や末節骨との関係、加齢など、さまざまな要因が巻き爪に関係すると考えられています。

そのため、「靴を変えればすべての巻き爪が治る」というほど単純ではありません。

陥入爪と巻き爪はどっちが痛い?

「陥入爪と巻き爪では、どちらの方が痛いですか?」という質問を受けることがあります。

結論としては、病名だけで痛みの強さを比較することはできませんが、巻き爪は爪が変形しているだけの場合もあり、必ずしも痛みを伴いません。対して陥入爪は皮膚に爪が刺さっているため痛みを伴うのが一般的です。

また、痛みの程度は、爪の変形の程度だけでなく、爪が皮膚へどの程度圧迫・侵入しているか、炎症や肉芽を伴っているかなどによって大きく異なります。

陥入爪は炎症によって強い痛みが出やすい

陥入爪では、爪の角が皮膚を直接刺激しているため、炎症が強くなるとかなり強い痛みを生じることがあります。

特に、

  • 爪の横が赤く腫れている
  • 膿が出ている
  • 肉芽ができている
  • 靴を履くと激痛がある

といった場合には、歩行にも支障が出ることがあります。

巻き爪は変形が強くても痛みがない場合がある

巻き爪の場合、見た目ではかなり強く湾曲していても、皮膚への圧迫が強くなければ痛みがほとんどない場合があります。

一方、湾曲した爪が爪床や周囲組織を強く圧迫している場合には、巻き爪そのものでも強い痛みが出ることがあります。Pincer nail deformityについても疼痛を生じ得ることが報告されています。

巻き爪と陥入爪を併発すると痛みが強くなることがある

巻き爪によって爪の両端が内側へ湾曲し、その爪が周囲の皮膚へ食い込むと、巻き爪と陥入爪が同時に存在する状態になります。

この場合には爪による圧迫に加えて炎症も起こるため、強い痛みを伴うことがあります。

陥入爪と巻き爪では治療方法も異なる

陥入爪と巻き爪は異なる状態であるため、治療も同じではありません。

「爪が痛いから、とりあえず巻き爪矯正をする」のではなく、痛みの原因が爪の湾曲なのか、爪の端の食い込みなのか、あるいは両方なのかを判断することが重要です。

陥入爪の主な治療方法

軽度の陥入爪では、

  • 適切な爪切り
  • 靴による圧迫の改善
  • テーピング
  • コットンパッキング

などの保存療法を行うことがあります。

一方、肉芽形成や強い炎症がある場合、保存療法で改善しない場合、再発を繰り返す場合には、食い込んでいる爪甲側縁への処置や爪母に対する手術などを検討します。

陥入爪の治療には保存療法から部分的な爪甲処置、chemical matricectomyなど複数の選択肢があり、病態に応じて選択する必要があります。

巻き爪の主な治療方法

巻き爪では、「爪の湾曲そのもの」が問題となっている場合、爪の形を徐々に矯正する治療が中心になります。

症状や爪の形によって、

  • ワイヤー法
  • プレートなどを用いた矯正
  • その他の保存的な矯正治療
  • 外科的治療

などを検討します。

どの治療が適しているかは、爪の厚さ、湾曲の程度、痛みの有無、陥入爪を併発しているかなどによって異なります。

陥入爪と巻き爪を併発している場合の治療

実際の診療では、「巻き爪だけ」「陥入爪だけ」と明確に分かれている患者さんばかりではありません。

巻き爪によって湾曲した爪が皮膚へ食い込み、陥入爪を併発しているケースもあります。

この場合は、爪の湾曲だけを治せばよいのか、皮膚へ食い込んでいる爪への処置も必要なのかを判断します。

特に肉芽や化膿を繰り返している場合には、見た目の爪の形だけではなく、爪甲側縁と爪郭の位置関係まで確認したうえで治療方法を決めることが重要です。

陥入爪と巻き爪の違いについてよくある質問

巻き爪と陥入爪は同じものですか?

同じものではありません。巻き爪は、爪強く湾曲している「爪の形状の異常」を指します。

一方、陥入爪は爪の端が周囲の皮膚へ食い込み、痛みや炎症などを起こしている状態です。

ただし、巻き爪によって爪の端が皮膚へ食い込み、陥入爪を併発することはあります。

巻き爪ではなくても陥入爪になりますか?

はい、なります。これは陥入爪と巻き爪の違いを理解するうえで非常に重要なポイントです。

爪がほとんど巻いていない人でも、深爪によってできた鋭い爪の角が皮膚へ刺されば陥入爪になります。

したがって、「爪が巻いていないから陥入爪ではない」と判断することはできません。

巻き爪から陥入爪になることはありますか?

あります。巻き爪によって爪の端が内側へ強く湾曲すると、その部分が周囲の皮膚を圧迫し、陥入爪を併発することがあります。Pincer-shaped nailは陥入爪に関連する解剖学的要因の一つとしても報告されています。

そのため、巻き爪があり、さらに爪の横に赤み・腫れ・痛み・肉芽などが出てきた場合には、陥入爪を併発している可能性があります。

陥入爪と巻き爪では治療方法が違いますか?

基本的には異なります。

巻き爪では、爪の湾曲が症状の原因となるため、ワイヤーやプレートなどによって爪の形を矯正する治療が選択肢になります。

一方、陥入爪では、爪による皮膚への食い込みが原因なので、皮膚との接触を減らすテーピングやコットンパッキングなどの保存療法、あるいは食い込んでいる爪甲側縁への処置などを行います。

ただし、巻き爪と陥入爪を併発している患者さんもいるため、実際には「病名だけ」で治療を決めるのではなく、爪の形、食い込みの位置、炎症や肉芽の有無、再発歴などを診察したうえで治療方法を選択します。

まとめ

陥入爪と巻き爪は混同されやすい症状ですが、同じものではありません。

巻き爪は「爪が横方向へ湾曲している状態」、陥入爪は「爪の端が周囲の皮膚へ食い込み、痛みや炎症を起こしている状態」と考えると違いが分かりやすいでしょう。

そのため、巻き爪ではなくても陥入爪になる可能性がありますし、巻き爪があっても痛くない場合もあります。また、巻き爪と陥入爪を同時に発症することもあるため、治療についても、方法は異なります。

巻き爪では爪の湾曲に対する矯正治療が中心になる一方、陥入爪では爪と皮膚の接触を解除することが重要になります。

爪の横に強い痛みや赤み、腫れ、膿、肉芽などがある場合や、同じ場所で症状を繰り返している場合には、自己判断で爪を深く切らず、形成外科などで爪と周囲の皮膚の状態を確認してもらうことをおすすめします。

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