陥入爪のテーピング方法|正しい貼り方・効果と治らない場合の治療を形成外科医が解説
陥入爪(かんにゅうそう)の保存的治療の一つに「テーピング法」があります。
陥入爪のテーピングは、爪そのものを無理に動かすのではなく、爪に接触している皮膚を外側へ引っ張り爪と皮膚の間にスペースを作ることで、食い込みによる圧迫や痛みを軽減します。
軽症の陥入爪であればテーピングによって症状が改善することがありますが、すでに爪の角が深く刺さっている場合や、肉芽・出血・化膿を伴っている場合には、テーピングだけでは改善しないこともあります。
この記事では、陥入爪にテーピングを行う目的から正しい貼り方、適したテープの選び方、テーピングを続けても治らない場合の考え方まで、形成外科専門医の視点から詳しく解説します。
陥入爪にテーピングをする目的・効果
食い込んでいる爪と皮膚の接触を減らす
陥入爪の痛みは、爪の端が皮膚に接触し、歩行や靴による圧力が加わることで強くなります。
テープを使って爪の横の皮膚を外側へ移動させると、爪と皮膚の接触が少なくなります。
原因となっている爪を直接切ったり抜いたりせずに負担を軽減できることが、テーピング法の大きな特徴です。
爪そのものを引っ張るのではなく、皮膚を爪から離す方向へ引く
テーピングで重要なのは、「爪を引っ張る」のではなく「皮膚を爪から離す」という考え方です。
食い込んでいる側の爪郭にテープを貼り、皮膚を爪から離れる方向へ軽く引っ張ります。
爪と皮膚の接触を減らした状態を維持しながら、爪が先端方向へ伸びていくのを待ちます。
爪による圧迫や痛みを軽減する
皮膚と爪の接触が減ることで、歩行時や靴を履いた際の圧迫が軽減され、痛みが改善することがあります。
実際にテーピングを用いた保存療法については国内外から報告があり、疼痛軽減や改善が認められています。ただし、効果には個人差があり、すべての陥入爪をテーピングだけで治療できるわけではありません。
陥入爪の正しいテーピングのやり方
テーピングは比較的簡単に行える方法ですが、引っ張る方向が間違っていると十分な効果を得られません。また、強く巻き過ぎると皮膚への負担になるため注意が必要です。
①テープを適切な長さに切る
まず医療用テープを、足の指に巻いて固定できる長さに切ります。
テープが短すぎると十分に固定できず、長すぎると必要以上に何重にも巻いてしまう原因になります。
足を洗った後は水分を十分に拭き取り、皮膚が乾燥した状態で貼りましょう。
②爪の食い込んでいる側の皮膚にテープを貼る
テープの一端を、爪が食い込んでいる側の皮膚にしっかり貼ります。爪の上に貼るのではなく、「爪に接触している皮膚を動かすために貼る」という点がポイントです。
③皮膚を爪から離す方向へ引っ張る
テープを軽く引っ張りながら、爪に接触している皮膚を爪から外側・下方へ離れるようにします。
爪と皮膚の間にわずかでも隙間ができ、食い込みによる圧迫が軽減される位置を探します。
ただし、強く引っ張れば効果が高くなるわけではありません。
皮膚が白くなる、しびれる、ズキズキするなどの症状が出るほど強く固定するのは避けてください。
④テープを指の下側へ回して固定する
皮膚を爪から離した状態を保ちながら、テープを足趾の下(ゆびの腹)側へ回して、反対側や爪の根本あたりで引っ張りを維持しながら固定します。
このとき、指全体を締め付けるように何重にも巻かないことが重要です。
貼った後に痛みが強くなったり、皮膚の色が変化したりする場合には、一度テープを外してください。
陥入爪のテーピングにおすすめの使うべきテープ
陥入爪のテーピングでは、皮膚に使用できる医療用の粘着テープを選びます。
重要なのは、
- 皮膚にしっかり密着する
- 適度に柔軟性がある
- 汗や歩行ですぐ剥がれない
- 皮膚への刺激が強すぎない
といった点です。
一般的なセロハンテープや梱包用テープなどを使用するのではなく、皮膚への使用を前提とした伸縮性のある医療用テープを使用してください。
また、テープがすぐ剥がれてしまう場合、テープそのものより「貼る前の皮膚」に原因があることもあります。
入浴直後で皮膚が濡れている状態や、汗・皮脂・保湿剤が残っている状態では粘着力が低下します。水分を十分に拭き取り、乾燥した状態で貼るのがポイントです。
一方、粘着力の強いテープでかぶれる方もいます。赤み、かゆみ、水疱などが出た場合には使用を中止してください。
陥入爪はテーピングだけで治る?形成外科を受診した方がよいケース
軽症の陥入爪では、テーピングやコットンパッキングなどの自分でも可能な保存療法が選択肢となります。
一方、爪の食い込みが強い場合や保存療法を続けても再発する場合には、爪甲の一部を処置する方法や爪母に対する治療など形成外科や皮膚科の受診を検討した方が良いです。治療方法は重症度や再発の有無などによって以下の様に選択されます。
爪の端が深く皮膚へ食い込んでいる場合
爪の角が皮膚の奥深くまで刺さっている場合、皮膚をテープで引っ張るだけでは原因となる爪の刺激を十分に解除できないことがあります。
特に深爪によって鋭い爪の角、いわゆる「爪棘」が残っている場合には、テーピングを続けるだけで改善させるのが難しいケースが多々あります。
自分でさらに爪を深く切るのではなく、医療機関で状態を確認してもらいましょう。
肉芽ができている・出血している
爪の刺激が繰り返されると、爪の横に赤く盛り上がった肉芽が形成されることがあります。爪棘による刺激が慢性的に続く中、傷が治ろうとしても炎症があるため過剰に治そうと大きく盛り上がった状態を肉芽と呼びます。
肉芽は非常に出血しやすく、靴や靴下が触れるだけでも痛みを生じる場合があります。
肉芽が大きくなっている場合は、ほとんどの場合手術が必要となるため、皮膚科ではなく早めに形成外科を受診する事が望ましいです。
膿や強い腫れがある
爪周囲が大きく腫れ、膿が出ている場合には感染を伴っている可能性があります。
この状態でテープを強く巻いたり、自己判断で爪を深く切ったりすると、症状が悪化することがあります。
感染が疑われる場合には、陥入している爪の状態と炎症の程度を診察したうえで治療方法を決定しますが、多くの場合では手術が必要になるため、早めの形成外科受診をおすすめします。
テーピングを続けても痛みや炎症を繰り返す
テーピングを正しく行っても何度も再発する場合には、テーピングだけでは十分に原因を解消できていない可能性があります。
その場合には、症状に応じてコットンパッキング、矯正治療、爪甲部分切除、フェノール法など別の治療を検討するため、皮膚科や形成外科の受診が勧められます。
特に再発を繰り返す陥入爪では、爪と爪郭のどこが接触しているのか、爪の幅や湾曲、深爪の有無などを確認して治療方法を選択することが重要です。
Q&A
皮膚科で陥入爪をテーピングで直していく方法をとることになりましたが、どうにも爪が埋まっているのを掘り出せることができなようにも思えます。根本の部分は既に肉に入り込んでしまっていて深めです。この場合はテーピングの方法では治らないですよね?
テーピングは、埋まっている爪を無理に「掘り出す」ための治療ではありません。皮膚を爪から離すことで刺激を減らし、爪が伸びていくのを待つ保存療法です。
そのため、軽度の陥入であればテーピングだけで改善する場合がありますが、爪の側縁が深く入り込んでいる場合や、爪棘が皮膚へ刺さっている場合には、テーピングだけでは十分に改善しません。
自分で埋まっている爪を掘り出したり、深く切ったりせず、治療を受けている医療機関で再度状態を確認してもらい、手術が必要な場合は形成外科を受診しましょう。
陥入爪のテーピングの頻度は寝る前、朝の1日2回巻けばいいのでしょうか?
基本的には「1日2回巻く」というより、適切な位置に貼ったテープを維持し、剥がれたり汚れたり、濡れた場合に交換するという考え方になります。
テープを交換する際には皮膚の状態も確認してください。
長期間テープを使用すると、粘着剤によるかぶれや皮膚のふやけが起こる場合があります。赤みやかゆみが強くなった場合には使用を中止し、医師へ相談してください。
陥入爪で皮膚科2カ所行き、爪の端を切り、テーピングを教えてもらい、続けているのですが改善しません。抗生剤も飲みましたが再発しました。陥入爪・爪周囲の炎症を治療するにはこれ以外のどういった方法で治療するのが早く治りますか?
抗菌薬は細菌感染を伴っている場合に必要になることがありますが、爪が皮膚へ食い込んでいるという物理的な原因そのものを解除する治療ではありません。
そのため、抗菌薬で炎症が一時的に改善しても、爪の食い込みが残っていれば再び炎症を起こすことがあります。
皮膚科に通ってテーピングで改善しない食い込みの場合には、長く保存療法で頑張って治療するよりも形成外科での爪棘切除が効果的な場合が多くあります。
陥入爪の患者さんの多くは、「とにかくこの爪の痛みをなんとかして欲しい」と願っている方が多く、特に皮膚科治療で改善できずに途方に暮れている方がたくさんいらっしゃいます。
局所麻酔の痛みに不安がある方も多くいらっしゃいますが、その日に陥入爪が改善する形成外科の治療は非常に喜ばれる事が多い治療です。
どの方法が適しているかは、爪の食い込み方、肉芽や感染の程度、再発歴などによって異なりますが、一度で治療が完了する根治手術も検討するのが良いと思います。
陥入爪の治療でテーピングをしてるのですが、すぐ剥がれてしまいます。汗の影響もあると思いますが、取れない方法はありませんか?
汗はテープが剥がれやすくなる原因の一つです。
貼る前に足を洗い、水分や汗、皮脂を十分に拭き取ってから貼ってください。保湿剤などを塗った直後もテープが剥がれやすくなります。
また、テープの角を丸く切っておくと靴下などに引っ掛かりにくくなる場合があります。
ただし、剥がれないようにするために指全体を強く何重にも巻くことは避けてください。
膿と血が出る陥入爪の肉芽はテーピング、塗り薬で治りますか?
膿と出血を伴う肉芽がある場合には、感染の有無や爪の食い込みの程度を診察する必要があります。
塗り薬だけでは、皮膚に刺さっている爪そのものを取り除くことはできません。
特に肉芽が大きくなっている、膿が増えている、赤みや腫れが広がっている、強い痛みがある場合には、テーピングと塗り薬だけで長期間様子を見ず、形成外科などを受診してください。
まとめ
陥入爪のテーピングは、爪を直接引っ張るのではなく、爪に接触している皮膚を外側へ移動させることで、食い込みによる圧迫や痛みを軽減する保存療法です。
軽症から中等症の陥入爪では有効な選択肢となりますが、すべての陥入爪がテーピングだけで治るわけではありません。
爪が深く食い込んでいる場合や、肉芽・出血・膿がある場合、テーピングを続けても繰り返し再発する場合には、食い込んでいる爪そのものへの治療が必要になることがあります。
また、「痛いから」と自分で爪の端を深く切ると、鋭い爪棘が残って陥入爪をさらに悪化させることがあります。
セルフケアを続けても改善しない陥入爪は無理に処置を続けず、形成外科などの医療機関で爪と周囲組織の状態を確認し、重症度に合った治療を選択することが大切です。

アクセス
