古林形成外科-横浜院

医療コラム

陥入爪の膿を自分で出そうとすると起こることを形成外科医が解説

陥入爪で膿が出てくると、「膿を全部出してしまえば治るのではないか」と考える方が少なくありません。

しかし、陥入爪による膿は単純なニキビや吹き出物とは異なります。

根本的な原因である「爪が皮膚へ食い込んでいる状態」が解決していないため、無理に膿を出しても再び炎症が起こることがほとんどです。

さらに自己処置によって症状を悪化させてしまうケースも珍しくなく、本記事では陥入爪の膿に対しての自己処置のデメリットを詳しく説明します。

陥入爪の膿を自分で出そうとすると起こること

細菌感染

陥入爪で最も危険なのは、自分で針や爪切り、毛抜きなどを使って膿を出そうとすることです。足はもともと細菌が多い環境で、そこへ新たな傷を作ることで、黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌、連鎖球菌などの細菌が侵入し感染を起こします。本来は軽い炎症で済むはずだったものが、本格的な細菌感染へ移行することもあります。また市販の消毒液を頻回に使用しすぎると、正常な組織まで傷つけてしまい、かえって治癒を遅らせる場合があります。

悪臭を放つ

感染が進行すると膿の量が増加し、独特の悪臭を伴うことがあります。これは細菌が組織を分解する過程で発生する代謝産物によるものです。

特に、靴の中で蒸れている、長期間放置している、肉芽が形成されているといったケースでは臭いが強くなる傾向があります。

「最近靴を脱ぐと臭いが気になる」
「ガーゼ交換時に強い臭いがする」

という場合は感染が進行している可能性があります。

発熱、腫れ

陥入爪の炎症が強くなると局所だけではなく全身症状が出ることもあります。例えば、足趾全体の腫れ、赤みの拡大、熱感、強い拍動痛、発熱などです。

さらに重症化すると蜂窩織炎(ほうかしきえん)という皮下組織への広範な感染症へ進行することがあります。蜂窩織炎になると抗菌薬治療が必要になり、場合によっては入院の上、点滴治療を行うこともあります。単なる陥入爪と思って放置すると、思わぬ重症化につながることがあるため注意が必要です。

陥入爪の膿が出たらやるべき事

陥入爪から膿が出た場合は、まず炎症を悪化させないことが重要です。自己流の処置を繰り返すのではなく、原因を取り除く方向で対応しましょう。

足を綺麗に洗う

まず大切なのは患部を清潔に保つことです。ぬるま湯と石鹸を使用し、優しく洗浄してください。このとき大切なのは、ゴシゴシこすらない、無理に膿を絞り出さない、アルコールで頻回消毒しないことです。洗浄後はしっかり乾燥させ、必要に応じてガーゼで保護します。

爪の切り方を見直す

陥入爪患者さんの多くに共通しているのが、不適切な爪切りです。特に問題となるのが「深爪」です。爪の角を丸く切り落としてしまうと、その後伸びてきた爪が皮膚の中へ潜り込みやすくなります。

理想的なのはスクエアカットで、爪先をまっすぐ残し、角を切り込みすぎないようにしましょう。痛い部分を切れば楽になると考えて深爪を繰り返すと、かえって陥入爪は悪化していきます。

足に合う靴を選ぶ

靴の圧迫は陥入爪を悪化させる大きな原因です。特に、先端が細い靴やサイズの小さい靴、ハイヒール、安全靴などは親指への圧力が強くなります。膿や炎症がある期間は、つま先に余裕がある靴や幅広タイプの靴を選択する必要があり、場合によりサンダルなどを選ぶと症状の悪化を防ぎやすくなります。

それでも陥入爪が膿んで痛い場合は形成外科で治療をしてください!当院の治療方法

膿が出ている状態は、すでに陥入爪が中等度から重症へ進行しているサインです。この段階では単純な消毒や軟膏だけでは改善しないことも少なくありません。なぜなら問題の本質は膿ではなく、「爪が皮膚へ食い込み続けていること」にあるからです。

当院ではまず炎症の程度、肉芽形成の有無、感染の有無を詳細に評価します。

その上で、形成外科的爪形成術を選択し根治を目指します。特に肉芽や膿を繰り返している症例では保存療法にも限界があり、原因となる爪の食い込みを外科的に解消する治療を行うことで再発予防を目指します。

「何度も膿を繰り返している」
「薬を塗っても改善しない」
「歩けないほど痛い」

という場合は早めの受診をおすすめします。

Q&A

陥入爪で膿が出ているイコール細菌感染していると思っていたのですが、クリニックに受診し医師に聞いたところ感染はしてないとのことでした。とりあえず安静にとのことでした。ではこの膿は何なのでしょうか?このまま放置して感染を見逃して悪化してしまうのが怖いです。

実は膿のように見えても、必ずしも細菌感染とは限りません。陥入爪では爪が皮膚を刺激し続けることで慢性炎症が起こります。

その結果、炎症性滲出液や組織液、壊れた細胞成分などが混ざり、膿のように見えることがあります。

感染がない場合は、赤みが強く広がらない特徴があり、熱感の少なさや発熱しない上に痛みが急激に悪化しないことが多いです。

ただし症状が悪化する場合は再受診が必要です。

陥入爪で足の親指が炎症を起こしています。部分的に化膿してるみたいですが、何故か足の先端に膿が溜まっていました。こんな事はあるのでしょうか?

十分あり得ます。足趾の皮下組織は完全な仕切り構造ではないため、炎症によって生じた膿や滲出液が組織の隙間を伝って別の場所へ移動することがあります。

実際には爪の脇が原因であっても、先端や裏側に膿が集まって見えることがあります。しかし自己判断で膿を出そうとすると感染を悪化させる可能性があるため注意が必要です。

陥入爪で血と膿が出ている状態なのですが、手術となるとどれくらい痛いですか?

現在の陥入爪手術は局所麻酔を使用して行います。麻酔注射の際に少し痛みはありますが、手術中の痛みはほとんどありません。また近年は極細針や麻酔方法の工夫により、注射時の痛みもかなり軽減されています。

むしろ患者さんからは、

「手術より陥入爪そのものの方が痛かった」
「もっと早く受診すれば良かった」

という感想をいただくことが少なくありません。術後は数日程度痛みが出ることがあり、3日ほど歩行を控えて安静にすることが望ましいです。

まとめ

陥入爪で膿が出た場合、自分で無理に膿を出そうとするのはおすすめできません。

自己処置によって、細菌感染を起こし、悪臭や腫れ、発熱などを引き起こし、かえって症状を悪化させる可能性があります。

まずは患部を清潔に保ち、爪の切り方や靴を見直すことが重要です。しかし膿や痛みが続いている場合は、すでに爪の食い込みが進行している可能性があります。その場合は原因そのものを治療する必要があるため、陥入爪治療を専門的に行う形成外科への受診をおすすめします。

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