脂肪腫と粉瘤の違いと見分け方|原因・診療科・手術方法まで形成外科医が解説

皮膚の下にしこりができた時、それが脂肪腫なのか粉瘤(アテローム)なのかを見分けるのは医療従事者でも難しい場合があります。
どちらも良性腫瘍なのであまり焦る必要はありませんが、見た目や触った感触、痛みの有無などにそれぞれ特徴があります。
脂肪腫や粉瘤だと思っていたものが、まれに悪性腫瘍であるケースもあるため、自己判断は危険です。
この記事では、脂肪腫と粉瘤の違い・原因・診療科の選び方・手術方法、さらに患者さんからよくある質問まで形成外科クリニックの視点で詳しく解説します。
脂肪腫と粉瘤の違いと見分け方
皮膚の下にしこりを感じたとき、「脂肪腫かな?それとも粉瘤?」と迷う方は少なくありません。
どちらも良性腫瘍であり、この二つで皮膚皮下腫瘍の過半数を占める代表的な腫瘍ですが、見た目・触感・痛みにいくつかの違いがあります。
見た目の違い
- 粉瘤:中央に黒い開口部(毛穴の詰まり)が見えることが多く、時に炎症で赤く腫れる。
- 脂肪腫:皮膚の色はほぼ正常で、盛り上がりはなだらか。表面に黒い点などはない。
形の特徴
- 粉瘤は球状に近く、境界が比較的はっきりしている。
- 脂肪腫は柔らかい塊が皮下に広がるように存在するため、やや平べったいことも。粉瘤の様に球状を呈する場合もある。
触った感触・硬さの違い
- 脂肪腫はやや柔らかく、押すと動く。
- 粉瘤はやや強い弾力があり、炎症時には膿が溜まったり張って硬く感じる。
痛みの有無
- 脂肪腫は基本的に無痛。
- 粉瘤は通常無痛だが、ひとたび感染や炎症を起こすと強い痛みや熱感を伴う。
脂肪腫と粉瘤ができる原因
脂肪腫の原因(脂肪細胞の増殖)
脂肪腫は皮下脂肪細胞が増殖してできる良性腫瘍です。遺伝的要因や外傷などの衝撃、ホルモンバランスの変化などが関与すると考えられています。
粉瘤の原因(毛穴の詰まり・角質や皮脂の蓄積)
粉瘤は毛穴の出口が塞がり、皮膚の内側に角質や皮脂がたまって袋状の構造(嚢腫)を形成したものです。
中には悪臭を伴う白いかたまり(角質や皮脂)が詰まっています。
脂肪腫と粉瘤の鑑別方法
視診・触診
医師は形状、皮膚表面の変化、触ったときの感触、動きや硬さである程度鑑別します。
超音波(エコー)検査
非侵襲的で短時間に行える検査です。脂肪腫は均一なエコー像、粉瘤は袋状構造と内部の充実エコーを示すことが多いです。
必要に応じた病理検査
切除した腫瘍を病理検査に回し、脂肪腫や粉瘤の確定診断、悪性の有無を確認します。
脂肪腫と粉瘤は何科?診療科目で迷ったらココ
皮膚科で対応できる場合
小さく、炎症や感染がない場合は皮膚科での切除が可能なこともあります。
形成外科を選ぶべき理由(仕上がりと再発予防)
- 首や顔など目立つ部位では、形成外科の縫合法で傷跡を最小限にできる。
- 脂肪腫や粉瘤の袋(被膜)を完全に取り除くことで再発予防が可能。
- 切除組織を病理検査に回し、悪性の可能性を確実に除外できる。
「見た目のきれいさ」と「確実な診断・治療」を両立するなら形成外科が最適です。
脂肪腫と粉瘤の手術方法
脂肪腫の切除手術
局所麻酔下で皮膚を切開し、脂肪の塊を膜ごと摘出します。比較的大きな場合もあり、縫合が必要なことがほとんどです。
粉瘤の切除手術(くり抜き法・切開法)
- くり抜き法:トレパンという器機を用いて小さな穴をあけ、そこから袋ごと摘出し、縫合しないか最小限の縫合で済む方法。
- 切除法:メスで切開し、嚢胞を袋ごと切除する方法。必ず縫合が必要。
- 切開排膿法:炎症時にはまず切開排膿し、炎症が落ち着いた後に袋を摘出する二段階手術。
Q&A
脂肪腫と粉瘤は薬で治りますか?
脂肪腫も粉瘤も薬で完全に治すことはできません。粉瘤が炎症を起こしている場合は抗生物質で一時的に症状を抑えることは可能ですが、根治には手術が必要です。
エコーで脂肪腫と粉瘤の違いは分かりますか?
ある程度の鑑別は可能ですが、最終的な診断は病理検査によって確定します。
良性腫瘍ができやすい体質だと悪性腫瘍もできやすいですか?
直接的な関連はありません。ただし、新たにできたしこりが急に大きくなった場合や形がいびつな場合は早めに受診を。
脂肪腫や粉瘤を長く放置しても大丈夫ですか?
脂肪腫は大きくなることがありますし、粉瘤は炎症や感染を起こすと強い痛みや膿が出ます。放置は避け、早めの切除をおすすめします。
まとめ
脂肪腫と粉瘤は見た目や触感である程度区別できますが、確定診断には医療機関での診察が必要です。
どちらも良性であることが多いものの、放置すると炎症や大きな腫瘍に成長する可能性があります。
安全に、きれいに、そして再発を防ぎたい場合は形成外科での診断・治療が最適です。
気になるしこりがある方は、自己判断せず早めに受診しましょう。