脂肪腫と脂肪肉腫の見分け方|良性と悪性の違い・見極めのポイントを形成外科医が解説

「しこりがあるけど、これって悪いものじゃないのか心配…」
そんな不安を抱えて形成外科を受診される方は少なくありません。
特に良性の粉瘤や脂肪腫は件数も多く、中には脂肪肉腫といった悪性腫瘍も稀に遭遇します。見た目だけでは区別がつかない悪性のできものについて、違いや見分け方、治療法まで詳しく解説します。
脂肪腫と脂肪肉腫、何が違う?
脂肪腫は良性、脂肪肉腫は悪性腫瘍
脂肪腫は、皮膚の下の脂肪細胞がゆっくり増殖してできる良性の腫瘍です。「数十年あるけどあまり変わらない大きさだ」と診察で仰られる患者さんも少なくありません。
体内のどこにでもできる可能性があり、多発する体質の方もいて、比較的日常的に目にする疾患の一つです。
一方で、脂肪肉腫は脂肪細胞に由来する悪性腫瘍で、筋肉や深部組織にまで浸潤する恐れがあります。
そもそも肉腫とがんは由来が異なり、がんは皮膚、消化管、線組織などの主に上皮性組織由来のもので臓器から発生する悪性腫瘍です。
対して肉腫は筋肉、骨、脂肪、血管、神経など非上皮性組織から新生する悪性腫瘍で、がんとは違って非常に稀な悪性腫瘍になります。発生率も10万人に3人程度で、そのうちの10%程度が脂肪肉腫にあたります。
肉腫には緩やかに進行する分化型のものや、進行の早い未文化型のものがあり早期に見分けて、必要に応じた治療を受けることが重要です。
見た目や症状では区別がつかないこともある
どちらも「やわらかいしこり」「痛みがない」といった共通の症状があるため、自己判断では見極めが困難です。
特に脂肪肉腫は初期に自覚症状が乏しく、気づかないうちに進行してしまうケースもあります。
脂肪腫と脂肪肉腫の見分け方
サイズ・増殖スピード・痛みの有無に注目
以下のような変化がある場合は、注意が必要です。
- 急速に大きくなる(数ヶ月で数センチ以上)
- 圧痛やしびれを伴う
- 表面が硬く、周囲と癒着している
- 皮膚が赤くなったり、変色がある
これらは脂肪肉腫の可能性を示唆するサインであり、すぐに専門医の診察が必要です。
画像検査(MRI・CT)や病理検査での確定診断
最終的な診断には、以下のような検査が行われます。
- エコー(超音波)検査:大きさ・構造を簡易的に確認
- MRIやCT:深部の広がりや浸潤の有無を調べる
- 病理検査(組織検査):腫瘍の細胞を顕微鏡で分析し、確定診断
自己判断は危険。専門医の診察を受けましょう
「痛みがないから大丈夫」「脂肪のかたまりっぽいから安心」——そう思い込むのは危険です。
とくに3cm以上のしこり、または急に大きくなったしこりは、念のため医師の診断を受けましょう。
脂肪腫の治療方法
形成外科での切除術が基本
脂肪腫の治療は、メスで腫瘍を切除する外科的手術が基本です。
しこりを取り除いたあと、縫合して傷口を閉じます。局所麻酔での日帰り手術が可能なケースがほとんどです。
しこりが大きい場合や深部にある場合は、術前に画像検査を行い、適切な方法で対応します。
保険適用になるケースも多数
脂肪腫の切除は、保険診療の対象となることが多く、3割負担の場合の費用は数千円~1万円程度が目安です。
美容目的ではなく「医療的に必要」と判断される場合は、形成外科での対応をおすすめします。
Q&A|脂肪腫・脂肪肉腫でよくある質問
急に大きくなったら脂肪肉腫ですか?
必ずしもそうとは限りませんが、急激な増大は脂肪肉腫の可能性も否定できません。念のため、形成外科での診察を受けてください。
放置するとどうなる?
良性の脂肪腫であっても、大きくなれば神経を圧迫したり、見た目に影響する場合があります。悪性腫瘍のリスクがある場合は、早期治療が必須です。
何科を受診すればいい?
しこりの診断・治療は「形成外科」または「外科」での対応が一般的です。皮膚の変化もある場合は、皮膚科からの紹介となることもありますが、確実な治療を希望されるなら形成外科をおすすめします。
まとめ|脂肪腫と思っていても安心せず、まずは形成外科での診断を
脂肪腫はほとんどが良性ですが、稀に脂肪肉腫のような悪性腫瘍が紛れていることがあります。
自己判断に頼らず、しこりが気になるときはまず形成外科での診察を受けることが大切です。
当院では、豊富な症例経験をもとに、しっかりと診断・治療を行っております。
「もしかして脂肪腫かも?」と感じたら、お気軽にご相談ください。あなたの安心につながる正しい診断と治療を提供いたし