古林形成外科-横浜院

医療コラム

陥入爪の肉芽は自分で治せる?正しい対処法とやってはいけない処置を形成外科医が解説

陥入爪(かんにゅうそう)が悪化すると、爪が食い込んでいる部分に赤く盛り上がった「肉芽」ができることがあります。

「肉芽を自分で切れば治る?」
「膿を出した方が早く治る?」
「市販の塗り薬だけで治せない?」

と考える方もいるかもしれません。

しかし、陥入爪にできる肉芽は、爪による慢性的な刺激や炎症によって生じていることが多く、肉芽だけを切ったり潰したりしても原因となる爪の食い込みが残っていれば再発する可能性があります。

この記事では、陥入爪の肉芽に対して自宅でできる対処法、絶対に避けたい自己処置、市販薬・塗り薬を使用する際の注意点、医療機関を受診すべき状態について形成外科専門医の視点から詳しく解説します。

陥入爪の肉芽を自分で治す方法

陥入爪による肉芽は、爪の端が周囲の皮膚へ繰り返し食い込む刺激によって生じることがあります。

そのため、自宅で対処する場合も「肉芽をなくす」ことだけを目的にするのではなく、まず爪と皮膚の接触や圧迫を減らすことが重要です。

ただし、肉芽が大きい、出血を繰り返す、膿が出る、強く腫れているといった場合には、セルフケアだけで治そうとせず医療機関を受診してください。肉芽形成や爪郭の肥厚は、そもそも重症の陥入爪でみられる所見です。

刺激を減らす

まず重要なのは、患部への物理的な刺激を減らすことです。

先端の狭い靴やサイズの合わない靴を履いていると、靴によって爪と周囲の皮膚が圧迫され、歩くたびに食い込み部分へ力が加わります。

できるだけつま先に余裕のある靴を選び、患部が強く圧迫されない状態を作りましょう。

ランニングや球技など、つま先に繰り返し強い力が加わる運動も症状を悪化させることがあります。狭い靴や反復する外傷は、陥入爪に関連する要因として知られています。

患部を清潔に保つ

肉芽ができている部分は、少し触れただけでも出血したり、浸出液が出たりすることがあります。

汗や汚れが付着したままにならないよう、患部を清潔に保つことが大切です。

入浴時などにやさしく洗浄し、その後は清潔なタオルやガーゼで水分を取りましょう。

ただし、「消毒しなければならない」と考えて何度も強い消毒を行ったり、患部をゴシゴシ擦ったりする必要はありません。

深爪を避ける

陥入爪で痛みがあると、

「食い込んでいるところだけ切れば楽になる」

と考えて、爪の角を深く切ってしまう方がいます。

一時的に痛みが軽くなることはありますが、残った爪の角が鋭い「爪棘(そうきょく)」となり、伸びてきた際に再び皮膚へ刺さることがあります。

爪の側縁を深く切り込むことは避け、基本的には爪の先端を極端に丸く切らないようにします。不適切な爪切りは陥入爪のリスク要因の一つです。

すでに深く刺さった爪がある場合には、自分で掘り出そうとせず医療機関で処置を受けましょう。

テーピングで皮膚と爪の接触を減らす

軽症から中等症の陥入爪では、テーピングを利用する方法があります。

爪をテープで持ち上げるのではなく、爪の横にある皮膚を爪から離れる方向へ引っ張って固定します。

これにより、爪と皮膚の接触を減らし、食い込みによる刺激を軽減します。テーピングは保存的治療の一つとして用いられています。

ただし、肉芽が大きく、テープを貼るだけでも強く痛む場合には無理に行わないでください。

陥入爪の肉芽を自分で治す際にやってはいけないこと

陥入爪の肉芽は赤く盛り上がっているため、「余分な肉を取れば治るのでは」と考えてしまう方もいます。

しかし、自分で肉芽を切ったり潰したりすることはおすすめできません。

肉芽をハサミや爪切りで切る

肉芽は血管が豊富で、非常に出血しやすい組織です。ハサミや爪切りで切ると大量に出血したり、傷口から感染したりする可能性があります。

さらに、原因となる爪の食い込みが残った状態では、肉芽だけを切っても再び形成される可能性があります。

肉芽に対する処置が必要な場合は、医療機関で爪の状態と併せて治療することが重要です。

肉芽を潰す・むしる

肉芽を指やピンセットで潰したり、むしったりすることも避けてください。肉芽を傷つけると出血や炎症が強くなる可能性があります。特に何度も触ることで傷が治りにくくなり、さらに爪による刺激が加わるという悪循環になることがあります。

膿を自分で出す

膿が溜まっているように見えても、自分で針を刺したり、皮膚を切ったり、強く押して膿を出したりすることはおすすめできません。陥入爪では「膿を出すこと」だけではなく、皮膚に食い込んでいる爪の状態を確認することが重要です。膿、強い発赤・腫脹、痛みの増悪がある場合には医療機関を受診してください。

無理なテーピングをする

テーピングは適切に行えば爪と皮膚の接触を軽減できますが、強く引っ張れば効果が高くなるわけではありません。

強く巻き過ぎると、テープによる皮膚障害や圧迫が生じる可能性があります。また、肉芽の上に直接強くテープを貼ると、剥がす際に肉芽から出血することもあります。

痛みを我慢しなければ貼れない状態であれば、セルフケアを続けるのではなく一度診察を受けましょう。

陥入爪の肉芽に市販薬・塗り薬を使う際の注意点

「肉芽があるから塗り薬を使えば治る」と考える方もいますが、塗り薬の役割には限界があります。

陥入爪の基本的な問題は、食い込みにより爪と皮膚の機械的な接触が起きている事です。

そのため、抗菌薬や炎症を抑える薬を使用して一時的に赤みや炎症が改善したとしても、食い込んでいる爪がそのままであれば症状を繰り返すことがあります。

また、膿があるからといって必ず抗菌薬が必要になるわけではありません。陥入爪では、明らかな蜂窩織炎などを除き、抗菌薬をルーチンに使用しても治療成績を改善しないとする報告があります。

特に注意したいのが、自己判断によるステロイド外用薬や抗菌薬の長期使用です。

感染の有無によって適切な薬剤は異なるため、市販薬を長期間塗り続けても改善しない場合は、薬を変更し続けるのではなく医療機関で原因を確認してください。

陥入爪の肉芽はどのような状態になったら病院へ行くべき?

肉芽ができている陥入爪は、すでに爪による刺激がある程度継続している状態と考えられます。

特に以下のような場合には形成外科や皮膚科などを受診しましょう。

肉芽が大きくなっている・出血を繰り返す

肉芽が徐々に大きくなっている場合や、靴下に触れるだけで出血するような場合には、自宅で肉芽を処置しないでください。原因となる爪の状態を確認し、必要に応じて爪への処置を行います。

膿が出る・赤みや腫れが強くなっている

膿が増えている、赤みが周囲へ広がっている、熱を持って腫れている場合などは感染を伴っている可能性があります。特に発熱や赤みの拡大などを伴う場合には、早めの診察が必要です。

歩行や靴を履く際に強い痛みがある

陥入爪によって歩行が困難になるほど痛みがある場合には、保存的なセルフケアだけで改善する段階を超えている可能性があります。

強い疼痛や化膿を伴う陥入爪では、保存療法より外科的治療が選択されることがあります。中等症から重症では外科的治療の方が再発予防に優れるとされています。

セルフケアをしても改善しない・何度も再発する

テーピングなどを続けても何度も同じ場所が腫れる場合には、爪の側縁や爪棘が継続的に皮膚を刺激している可能性があります。

症状によっては、食い込んでいる爪甲側縁の処置や、フェノール法などの爪母に対する根治手術を検討します。

単純にその都度爪を短く切るだけでは、伸びてきた爪が再び刺さって再発することがあります。

陥入爪の肉芽を自分で治したい方からよくある質問

陥入爪を5年ほど皮膚科に行かず、自分で処置しています。幸い、これまで肉芽ができたことはなく、たまに痛みが出る程度です。痛みが出たときは、食い込んでいる爪を自分で切って対処しています。長期間放置していたこともあり、もし手術が必要になった場合、どのような治療になるのか不安です。肉芽ができていない状態であれば、大がかりな手術になる可能性は低いのでしょうか?

5年間続いているからといって、必ず大がかりな手術が必要になるわけではありません。

治療方法は「何年間あるか」だけではなく、現在の爪の食い込み方、爪の形、炎症の程度、再発頻度などによって決まります。

軽症であれば、テーピングやコットンパッキングなどの保存療法を検討できる場合があります。

一方、同じ場所で何度も痛みを繰り返している場合には、食い込んでいる爪甲側縁への処置や、再発例では爪母の一部を処理する治療が選択肢になります。フェノールなどを用いた部分的な爪母処置は、再発を抑える目的で用いられる治療の一つです。 

なお、痛くなるたびに自分で爪の端を深く切る方法は、爪棘を作って再発を繰り返す原因になることがあるためおすすめできません。

1週間前から、深爪から陥入爪になり爪周囲炎、肉芽ができてしまいました。病院に行くと液体窒素で処置されると聞き、私は液体窒素が苦手なので自分でどうにかしたいと思ってしまいました。このような状態はどうすれば良くなるでしょうか?

陥入爪で肉芽があるからといって、必ず液体窒素による治療を行うわけではありません。

治療方法は、肉芽の大きさ、爪がどの程度刺さっているか、感染の有無などによって異なります。

軽度であればテーピングなどの保存療法が可能な場合がありますが、肉芽が大きい場合や強い炎症がある場合には、食い込んでいる爪への処置が必要になることがあります。

液体窒素が苦手であることを受診時に医師へ伝えれば、状態に応じて他の治療法を検討できる場合があります。

「液体窒素を避けたいから受診しない」という必要はありません。

陥入爪ができて、外科で爪を切ってもらいました。結構深く切られ、切った時にできた爪がしばらくして伸びて刺さって再び陥入爪になってしまいました。また肉芽もできています。

深く切った爪の側縁に鋭い爪棘が残り、それが伸びて皮膚へ再び刺さっている可能性があります。

このような場合、肉芽だけを治療しても、爪による刺激が続けば再発することがあります。

まず現在どの部分の爪が皮膚へ刺さっているのかを確認する必要があります。

再発を繰り返している場合には、その都度爪を短く切るだけではなく、爪の形や食い込み方に応じて矯正治療や爪甲側縁への処置、フェノール法などの根治手術を検討します。

足の親指に陥入爪ができて、化膿して肉芽ができてしまったため病院で刺さっている部分を取る処置を受けました。また化膿して肉が盛り上がって周辺の皮膚がブヨブヨしてきました。再度病院へ行き、麻酔を打って膿を出し、ドライアイスで肉を焼く処置をして頂きましたが、1週間後にまた同じ状態になってしまいました。これは永遠に同じ処置を受け続けないといけないのですか?病院へ行かずに自分で治すことは難しいですか?

同じ処置を永遠に繰り返さなければならないわけではありませんが、適した治療を受けられてない可能性があります。

膿を出したり肉芽を処置したりしても、爪が皮膚へ食い込む原因が改善されていなければ再発します。

このように短期間で化膿や肉芽を繰り返している場合には、「肉芽をどうするか」だけではなく、「どの部分の爪が皮膚を刺激しているのか」「再発を防ぐために爪そのものへ処置が必要か」を改めて評価することが重要です。

再発性あるいは中等症から重症の陥入爪では、部分的な爪甲処置に加えて爪母を処理する根治手術などが必要です。外科的治療は保存的治療より再発防止に優れるというエビデンスがあります。

すでに化膿と肉芽を繰り返している状態なので、一度、陥入爪の治療を行っている形成外科などで、再発の原因まで含めて診察を受けることをおすすめします。

まとめ

陥入爪による肉芽は、単に「余分な肉が増えた」という状態ではありません。多くの場合、爪が皮膚へ食い込み続けることで炎症が起こり、その刺激に伴って肉芽が形成されています。

軽症であれば、

  • 患部への刺激を減らす
  • 清潔に保つ
  • 深爪をしない
  • 適切なテーピングで爪と皮膚の接触を減らす

といったセルフケアで改善する場合があります。

一方、肉芽を自分で切る、潰す、むしる、膿を無理に出すといった行為は、出血や感染、炎症の悪化につながる可能性があるため避けてください。

肉芽が大きい、膿や出血が続く、歩くのも痛い、何度も同じ場所に再発するといった場合には、自分で治すことにこだわらず、形成外科などで原因となっている爪まで含めて治療することが重要です。

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